恐らく多くの方が「景徳鎮」という、世界に冠たる磁器の産地をご存知でしょう。
今更ですが、この景徳鎮は宋の時代から、元、明、清に渡って、中国を代表する磁器を作ってきた場所です。白地に青い染付は青花と呼ばれ、染付磁器の優品を輩出し、宮廷でも用いられる一方、欧州、イスラム圏など海外諸国にも広く輸出され、chinaの語源にもなった。
ヨーロッパや中東を旅すると、宮廷にはこの景徳鎮の磁器が宝物のように飾ってあるを見た方も多いと思います。 それほど景徳鎮の磁器は凄かった。
この景徳鎮に追いつこうと、朝鮮、日本、そしてドイツのマイセンなどが、染付磁器の技術取得に懸命になっていたのです。まさに磁器の最高峰なのです。
「せっかく景徳鎮に来たのだから、いい磁器を見せてもらおう・・・」
そう思ったのですが・・・・。
景徳鎮の街にやってきました。
しかし、どうも街の雰囲気がちょっとイメージと違う。
ガイドのKさんの説明が始ったのですが・・・。
「現在の景徳鎮には大きな焼き物工場はありません。開放政策後に国営の4つの工場は倒産してしまって、今は民窯の電気釜で細々と焼いてるだけです」
「ウソだろう! 景徳鎮に焼き物工場が全くない?」 少々ビックリ。
「今日の景徳鎮の観光は、窯場の博物館と遺跡見学と、磁器の売店へ行きます」
「うーん、景徳鎮はもう遺跡になったということか・・・・」
あ然とした顔のグループメンバーも私だけじゃなかったみたいです。
この旅のメンバーは20人。 中国は40回以上という人や、語学留学で大連に1年居た人などなど、所謂 中国通 とおぼしき面々。 その人たちまでビックリしています。
見学が始ったのですが、なかなか行く場所にたどり着かない。
ガイドのKさんが車を降りて、何度も地元の人に聞くのですが・・・。
やっとたどり着いた博物館。 撮影禁止でしたので写真はありませんが、殆どがレプリカでひどいものでした。
「俺は無知だった。景徳鎮がこんな姿とは露にも思わなかった・・・」
語学留学で1年も中国で暮らした人がそういわれるのですから、世評と実際のギャップは大きいのです。
窯場の遺跡をぐるり。
この博物館と遺跡の周囲は、今風の団地が広がっています。
陶磁器に詳しい人の話によると、景徳鎮は清代を最後に廃れたというのは、常識になっているというのです。素晴らしい作品は都の北京に運ばれ、それ以外の殆どの品は廃品として壊されていたので、この景徳鎮には欠片しか残っていないとか。
「小さい頃に歴史で景徳鎮という名前を覚えたのにな・・・。世界に誇る磁器の産地とばかり思っていたのに・・・」 少々恨み節が出てきますね。
磁器の売り場とやらへ。
せっかくだから、お店の磁器を撮っておきました。
日本のモノより少しは雰囲気がありますかね・・・。
この場所で面白い人に出会いました。
白磁の上に油絵具(たぶん)で絵を描いている画家さんがいました。
たまたま中国語を話せるメンバーがいまして、いろいろ話を聞きました。
「私は中国の田舎の風景ばかり描いてますよ」 わざわざ私たちのために自分のPR本を持ってきてくれました。
「そうか、景徳鎮もこういう形で生き残っているのか・・・」
まー、この画家さんも特徴を出すために白磁の板に描いているのでしょうが。
80㎝×80㎝の大きさで、価格は15万円~20万円だそうです。
世の中に 「ガックリ名所」 という言葉がありますが、景徳鎮はまさにそんな感じですね。しかし、擦りこまれた知識というのは、現状とは無関係に一人歩きするものですね。
中国人ガイドのKさんに聞きました。
「今の景徳鎮の主たる産業は何なの?」
「うーん・・・。 不動産業ですかね・・・・」
私には景色は全部同じように見えてしまいます。
白地にブルーのティーカップが素敵ですね。