タイの鉄道は日本とほぼ同じ時期に始まっています。以前ラマ5世の時代が明治時代とほぼ重なるというお話を書きましたが、鉄道もほぼ同時代のようです。
ところがどういうわけか、その後の発展が大いに異なる。
タイには新幹線はおろか、立派な鉄道網がない。列車は遅いし、車両は汚い。
しかし、バンコク駅はどこかヨーロッパの駅を思わせる雰囲気があります。
その日はちょうど暮の30日の夜。
バンコク駅の中は人、人、人。それも地面に座り込んでいる。
「こりゃ、まるで上野駅だね」
「雰囲気も良く似てるね」 と同行するらしい日本人と話を交わす。
何時も日本では新幹線ばかり乗ってるためか、バンコク駅はどこか懐かしい。
タイの駅はヨーロッパと同じで改札口がない。
ノコノコと予定のプラットホームへ行くと、ここも上野駅ムード。
私の写真技術が悪いばかりでなく、ホームが薄暗いのです。
そのうちに我々が乗る列車がしずしずと入ってきます。
「後ろ向きじゃ絵にならないなー」
さー私の苦手な寝台列車。
中国の貴州省の旅でも書きましたように、私は寝台列車が大の苦手。
まるで牢獄に入る囚人みたいな心境で・・・・・・
そのうち車掌のお兄ちゃんが手際よく寝台を用意してくれます。
寝台は上下の2段。上の段は下の写真の状態。
緑の小さなモップは小物入れで便利。右はベットライト。
私はほぼ寝るのを諦めて、ジート目をつむっていましたが・・・・。
「寒い!!」
「なんとかしてよ車掌さん!」
一生懸命ボディランゲージで車掌に訴えたんですが・・・・。
車掌のお兄ちゃんは「判った、判った」 という仕草だけで、一向に直らない。
「もう一枚毛布(と言っても薄いシーツ)をどうぞ」
ツアーの世話役の美人ちゃん(日本人)が救いの手を。
しかし、しかし・・・
しんしんと冷えてくるのです。
そこで、シャツ、チョッキを着込み、その上から寝巻きを着て防御。
それでも寒くて、寒くて、震えていました。
「これじゃまるで”冷凍列車”だ!!!」
たまりかねて列車についているトイレにタバコを吸いに行くと、そこはまるで天国のように暖かい。しかし、ズーとトイレに入っているわけにもいかず、自分のベッドに。
「どこかに冷気の吹き出し口があるはず・・・・」
勝手にその口を袋で止めましたが、そんな小細工ではだめ。列車全体がシンシンと冷えているのです。
「早く着いてくれ! この冷凍室から脱出したいよ」 そんな心境が続きます。
そのうち夜が明けてきました。結局一睡もせずじまい。
「2時間ぐらい遅れま~す」 と美人ちゃんのお達し。
「まだ冷凍列車から脱出出来ないの? どうにかしてよ!」
まー私のそんな気分とはお構いなく、列車はコトコトと進みます。
しょうがないから、得意の?トイレの中でタバコばかり(本当は違反みたい)
トイレの窓から写真を撮ったり、体を暖めたり・・・・
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どんなことにも終りがあるものです。
列車はやっと下車予定のランパンに到着。
「フー・・・・・」
やっと冷凍列車から解放されました。
「腹が減った。腹が減った!」
寝不足というより、全く寝ていないのに、列車から降りると途端に元気が出てきました。
観光なんてどうでもいいから、あったかい味噌汁でも飲んで、暖かい部屋で眠りたい。
北部タイの旅はこんな感じで始まりました。