バンコクの東南100キロ弱のバーンパコン川の漁村から船に乗りました。
別に遊覧船ではなく、まさしく漁船ですね。
漁船はのんびりとシャム湾に向かっていきます。
「ホントにイルカがいるのかなー」
漁船の先端に花が飾ってありますが、どの国でも漁師はエンギを担ぐもの。
何か意味があるのかも知れません。とにかくドンドンシャム湾へ進みます。
さーシャム湾の中に入ってきました。
「こりゃ無理だよ。こんな広い海でイルカを見つけるのは至難の業だぜ」
「シャム湾というより、シャム海だよ。まるで日本海のように広いよ」
薄っすらと岸辺の町が見えます。とてもバンコクは見えません。
「無理だ、無理だ。こんな広いところでイルカが発見できるわけがない!」
それでもイルカ見物の船が数隻集まっています。
「あんなに船がいるということは、ひょっとしたら見えるかも?」
「一番初めにイルカを見つけた人に商品でも出したらどうだ」
乗船した全員が目を凝らして海面を見ること数十分・・・・。
「× × × !!」 一緒に乗っていたタイの娘が指をさして叫びます。
雰囲気からして、「見えたよ! あすこ」 と言ってる感じ。
「何処? 何処よ!」
そう言ってるうちにイルカの姿は海の中。
イルカというのは群れる習性があるらしくて、タイ娘が見つけたすぐ後に、
「あー! 見えた、見えた」と日本人の子供の大きな声。
「うん。確かにイルカはいるな・・・」
そのうち船のあちこちこちから「見えた、見えた」の歓声が上がりました。
私を含めて日本人はほぼ全員がカメラを持っています。
「見えたけど、イルカを写真に撮るのは奇跡的幸運だよなー・・・」
とにかく、肉眼で見えたスグあとには、イルカは海の中。とてもカメラを構える余裕はない。
「うーん。どうすべーかなー」
「イルカは息継ぎをするから、見えた周辺にカメラを構えて、瞬間にシャッターを押せばいいんだよ」
「理屈はそうでも、何処に出てくるか判んねーじゃないか!」
イルカを写真に撮るのは諦めました。
しかし、せっかく来たからシャッターだけは押しておこう・・・・・。
その後は数十分、イルカの姿が見えた瞬間パチャパチャと。
「でも全く自信はないよ。写ってるのは海面ばかりだろうなー・・・・」
ところが意外と写っていたんですね、これが!
何か黒い物が見えますが、背びれのあるイルカですね。
遠くに白いイルカも見えます。
どうもこの遊覧船風の漁船の船長が、無線で大きな声で連絡しています。
互いに情報交換して、イルカがいそうな場所を教えあっているようです。
「あんなに船が集まってきたぞ」
「近くにイルカがいるんだ。きっと」
予想通り、いましたね、イルカちゃんが。
カメラの焦点がどうの、ピントがどうのという世界ではありません。
ただただ、しゃにむにシャッターを押す!
意外と近くのイルカが撮れました。
「あー・・・。肩が凝ったなー。とにかく2時間近く、いつ見えるか分からないイルカをジーと待って、見えた瞬間にシャッターを押すなんて作業はホントに疲れるよ」
「イルカの写真を撮りたければ水族館へでも行った方がいいよ」
「それは、そうだけどな・・・・・」
とにかく写真を撮ることに肩を凝らした我々は、またゆったりと船に乗って漁村へ帰りました。