タイには2003年から1年間滞在したり、その後も度々訪問しているので、時折報じられるタイの政情不安はちょっと気になるところです。
政情不安の根っこには、前首相のタクシンにあるようです。タクシンは聞くところによると、電線敷設の仕事で利益を得た実業家で、タイ北部を中心に田舎で人気のある政治家らしい。
「タクシン首相は言うこともはっきりしてるし、やることもやるからいいよ」
2003年当時はなかなかの人気で、実務家の世界では評価は高かったと感じました。
アセアンのリーダー国を自称するタイとしては、タクシンの行動力は魅力的だったようです。
反面、家族の利益確保があるとか、都市の市民レベルでは反感も。
何時だったか忘れましたが、国王がタクシンに「少しやりすぎだ」と言ったとか・・・・。
その後軍部のクーデターが起こって、タクシンは国外に逃れたという経緯がある。
この国は何度もクーデターが起きる国で、政権の寿命は平均2年~3年らしくて、その時々の変化のパターンは、軍部の動きと国王の裁定のようです。
日本ではどうもピンとこないのですが、国民の国王に対する尊敬と信頼は絶対ですね。国王こそが我々の味方で、まるで絶対の信頼を寄せる父親に対する思いを感じます。
軍部も政治家も自分の立場で行動しますから、国民はなかなか納得しない。それに反して、超越した存在の国王の裁定は、国家・国民のための裁定として妥当なものが多く、これまで国王が裁定すると、それが最後の決定となるようです。
今回の騒乱は実に解かりにくい。
サマック首相(辞任するようです)はタクシンの代理人を自認する人ですが、前回の軍事クーデターの後に総選挙で選ばれた政権です。
「選挙で選ばれた政権はまさに国民が選んだ政権だろう? 一部の反対やデモで政権を交代するなら、選挙はいったいなんだったんだ!」 普通の感覚ではそう思いますね。
首相官邸を占拠したデモは民主市民連合(PAD)が起こしたものですが、政府が排除出来ないので(排除すると人気が落ちる?)与党の国民の力党(PPP)が実力行使に出て死人が出たようです。
まだ軍部も動いていませんし、国王の裁定も出ていない。
タイのバンコクに行ってみないと、日本の報道だけでは本当のところはよくわかりませんね。
昨日届いたバンコクの知人のメールでは業務連絡が主体で、あまり政情不安の切迫感はまったくありませんでしたね。